母体がフモニシンに曝露されることは、新生児の口唇裂・口蓋裂の発症リスクを高める重要な因子のひとつと考えられています。なぜこの問題が注目されているのでしょうか。メキシコでは、トウモロコシ（エローテ）は主食として不可欠な存在であり、特に農村地域では毎日の食生活の中心となっています。こうした地域の妊婦さんは、フモニシンを含む可能性のあるトウモロコシを継続的に摂取することにより、先天性異常のリスクにさらされやすいのです。

フモニシンとは

フモニシンは、Fusarium moniliforme や Fusarium proliferatumといったカビが、トウモロコシの栽培や貯蔵の過程で産生するマイコトキシン（かび毒）の一種です。特に妊娠初期にフモニシンB1を含むトウモロコシを摂取した場合、赤ちゃんが口唇裂や口蓋裂を発症するリスクが高まることが報告されています。

口唇裂・口蓋裂とは

口唇裂・口蓋裂は、妊娠中に赤ちゃんの唇や口蓋（上あご）が正常に形成されないことで起こる先天性の口腔疾患です。この状態は多因子的な要因によって発生し、授乳・摂食の困難や発音障害などの問題を引き起こす可能性があります。さらに、小児期だけでなく成人後まで長く影響が残る場合もあります。

予防のための取り組み

口唇裂・口蓋裂の発症リスクを減らすためには、次のような戦略が重要です。

• 農業管理の改善：カビ毒の混入を防ぐための栽培・保存方法の改善。

• バイオマーカーの活用：曝露状況を特定するための検査技術の導入。

• 毒性メカニズムの解明：フモニシンが胎児発達に与える影響の研究。

• 母体の栄養改善：バランスの取れた食生活による防御力の向上 。

まとめ

フモニシンによる母体曝露は、新生児における口唇裂・口蓋裂のリスク因子として注目されています。特に農村部ではトウモロコシへの依存度が高いため、リスクが増大します。フモニシンによる汚染を最小限に抑えるための農業改善、曝露の検出、毒性メカニズムの理解、そして母体の栄養改善が欠かせません。これらを組み合わせることで、将来の赤ちゃんとご家族の健康を守ることができます。