三叉神経と感覚伝達の役割

三叉神経（第五脳神経とも呼ばれる）は、顔面から脳へ感覚情報を伝える最も重要な神経のひとつです。三叉神経は「眼神経」「上顎神経」「下顎神経」の3つの枝に分かれ、それぞれが異なる部位の感覚を脳に伝えます。

• 眼神経：額、目、頭皮など上顔面からの感覚を伝えます。

• 上顎神経：頬、鼻、上の歯や歯ぐきなど中顔面からの感覚を伝えます。

• 下顎神経：下あご、下の歯や歯ぐき、舌の一部からの感覚を伝えます。

三叉神経は痛みや温度などの感覚を伝える役割を果たします。むし歯や歯ぐきの炎症が起こると、この神経を通じて痛みの信号が脳に伝わり、脳はそれを「痛み」として認識されます。この仕組みによって脳は刺激に反応し、痛みを避けようとする反射や意識的な行動を引き起こします。

三叉神経の複雑な構造は、頭蓋底にある三叉神経節から広がる神経線維によって成り立っています。これにより顔全体を網羅し、口腔を含む広範囲の感覚を脳に届けています。

まとめると、三叉神経は口腔と脳をつなぐ重要な役割を担い、歯や歯ぐきの痛みを含む多様な感覚を脳へ伝えています。その働きを理解することで、神経と口腔の健康が私たちの生活にどれほど影響するかがわかります。

歯科感染症と全身の健康への影響

歯科感染症、特に治療が遅れた場合は、全身の健康に大きな影響を及ぼす可能性があります。代表的なのが歯周病です。歯を支える組織に炎症が起きる病気で、進行すると歯を失う原因になりますが、それだけでなく全身の病気とも深く関係しています。

歯周病の原因菌は血流に乗って全身へ運ばれ、さまざまな部位で感染や炎症を引き起こすことがあります。特に以下の病気との関連が指摘されています。

• 心疾患：歯周病のある人は、慢性的な炎症や細菌の影響で冠動脈に問題を起こしやすく、心疾患のリスクが高まります。

• 糖尿病：糖尿病と歯周病の関係は双方向性です。歯周病は血糖コントロールを悪化させ、糖尿病の進行を促します。逆に、糖尿病は免疫力を低下させることで口腔感染を起こしやすくします。この悪循環を断ち切るためには、口腔と全身の両方を同時にケアすることが重要です。

• 呼吸器疾患：口腔内の細菌が気管に入り、肺炎などを引き起こすことがあります。

定期検診と予防の重要性

歯科での定期検診は、むし歯や歯周病の早期発見・早期治療に不可欠です。口腔内の感染を放置すると全身の健康リスクにつながりますが、適切な口腔ケアと歯科受診を続けることで、そのリスクを大きく減らすことができます。研究や臨床報告でも、毎日の歯磨きと定期的な歯科通院を習慣にしている方は、重い全身疾患のリスクが低いことが報告されています。

まとめ

口腔の健康と全身の健康は密接に関わっています。歯や歯ぐきを守ることは、単に歯を失わないためだけでなく、全身の健康を守ることにも直結します。毎日の歯みがきやフロスに加え、定期的な歯科検診を受けることが、歯を守るだけでなく全身の健康を維持する鍵となります。